研究成果・技術情報

「令和4年度土木学会論文賞」 受賞

受賞名: 「令和4年度土木学会論文賞」 受賞
論文題目: ゼブラフィッシュの胚・仔魚期の生物応答と網羅的遺伝子発現解析による下水処理水の短期毒性評価
受賞者: 流域水環境研究グループ 水質チーム 主任研究員 北村友一
流域水環境研究グループ 水質チーム 派遣職員 阿部翔太
流域水環境研究グループ 水質チーム 研究員 服部啓太
流域水環境研究グループ 水質チーム 上席研究員 山下洋正

受賞日:2023年6月9日


贈賞組織名:公益社団法人 土木学会


賞の概要

論文賞
 論文賞は、原則として、土木学会誌、土木学会論文集、その他土木学会の刊行物に研究、計画、設計、施工、考案、維持管理などに関する論文を発表し、独創的な業績を挙げ、これが土木工学における学術・技術の進歩、発展に顕著な貢献をなしたと認められる論文の著者に授与する。

受賞理由:

 本論文で提案された下水処理水の魚類への急性および慢性影響を同時に検出する方法について、その有用性は高く評価される。従来の生物応答試験(魚類胚・仔魚期における短期毒性試験)に次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子発現・解析技術を組み合わせることにより、1回の曝露実験で急性影響と遺伝子レベルでの慢性影響を同時検出できる可能性が示されている点は特筆すべきである。さらに本論文では、遺伝子レベルでの慢性影響をオゾン処理や下水処理の希釈効果により軽減できることを明らかにしており、三次元蛍光分析を用いた水質分析が遺伝子発現影響評価に有用となる可能性についても指摘している。下水処理水の魚類影響について学術的に重要な知見が得られており、魚類生態保全の課題解決を実行してゆくための新たな可能性が示されている論文として評価される。本論文で提案された方法には、省力化的でありながら下水処理水の水質管理レベルを大きく向上させる可能性も認められる。本論文の内容は環境工学の発展に大きく資するものであり、現代社会の喫緊のニーズに応える内容を含んでいる。
 以上のように本論では、下水処理水の毒性評価について、その有用性と実用性に関する多くの知見を見出しており、論文賞に相応しいと認められた。

  
賞状 表彰盾
賞状 表彰盾