「応用生態工学会第27回さいたま大会 優秀口頭発表賞」受賞
受 賞 名: | 「応用生態工学会第27回さいたま大会 優秀口頭発表賞」受賞 |
論文題目 : | 日本列島における渇水特性および取水制限状況、水生昆虫の分類群的多様性の広域スケール評価 |
受 賞 者: |
岡本聖矢 (流域水環境研究グループ 自然共生研究センター 専門研究員) 相川隆生 (流域水環境研究グループ 自然共生研究センター 主任研究員) 中川光生 (流域水環境研究グループ 自然共生研究センター 専門研究員) 森 照 貴 (流域水環境研究グループ 自然共生研究センター 専門研究員) |
受賞日:令和6年6年9月20日(金)
贈賞組織名:応用生態工学会
本賞は、応用生態工学会第 27回大会において、一般の研究発表のうち、口頭発表が優秀と認められた者に授与されるものである。
世界的な気候変動下にある近年、前例のない規模の洪水・干ばつ(渇水)が観測されています。渇水に至るまでの流量減少は、農業、経済に影響を与えます。 また別の面では、生物種の生息環境の変化を通して、河川生態系を構成する多くの生物群集にとって負の影響があると考えられますが、日本列島広域を対象 とした流量減少と河川生物種との関係についての知見は少ない状況です。
本研究では、河川流量やダム貯水量の低下の際に実施される取水制限を流量減少の1つの指標として、水生昆虫の分類群数に与える影響を検討しました。 まず、生物情報として「河川水辺の国勢調査」 (2000-2020年)、流量情報として「水文水質データベース」(2001-2021年)、取水制限情報として「水資源白書」 (2001-2021年)から全国の河川の過去21年分のデータを取得・整理しました。次に、取水制限期間中の河川の流量を確認したところ、基本的に年間の平水や 取水制限と無関係な期間の流量よりも少ないことがわかりました。
最後に、取水制限の多かった夏期に注目して水生昆虫の分類群数を調べたところ、取水制限期間中において主に流水環境に生息するグループ (カゲロウ類・カワゲラ類・トビケラ類)の分類群数は、取水制限が実施されていない期間と比較して減少している傾向にありました。 一方で主に止水環境に生息するグループ(トンボ類・カメムシ類・コウチュウ類)においては、分類群数の差は認められませんでした。 流水生の分類群を多く含むグループは、止水生の分類群を多く含むグループに比べて、流量減少による環境変化(流速や水質)の影響を強く 受けたのではないかと考えられます。