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川底の生き物と細粒土砂と流域

 水中メガネで川底の様子を覗いてみると、石に着いた藻類やカゲロウなどの水生昆虫、また石を剥ぐってみると、石と石の積み重なった間にトビケラなどの水生昆虫や魚の卵など、いろいろな生き物が棲んでいるのが分ります。最近では、川の水と陸上の地下を流れる水が混ざりあう川底の地下部分(河床間隙水域)が、生き物の生息場としてだけではなく、物質が滞留し分解する重要な場所であることが分ってきました。

 また、そのような川底に微細砂やシルトと呼ばれる非常に細かい砂(細粒土砂)が堆積することによって、藻類の死滅、水生昆虫の生息空間の減少、河床間隙水域を流れる水の減少、それによる魚の卵の死滅など、川底の生き物に大きな影響を及ぼしていることも分ってきました。沖縄県で海へ赤土が流出してサンゴ礁を荒廃させていることが、大きな問題として取り上げられるようになりましたが、川でも同様なことが生じているのです。

 なぜ、このようなことが起こるようになったのでしょうか?細粒土砂は、もともと降雨時に山間部や川岸などの流域から川や海に流れ出すものでした。しかし、戦後急速に進められた森林・農地・都市開発により、地表の土が露出している場所が拡大し、川や海に流れ出す細粒土砂の量が多くなったことが原因のひとつと考えられています。

 川底の生き物の保全を考えるときは、細粒土砂のような生き物に悪影響をおよぼすものがどこから来るのか、川だけでなく、その川が流れる流域を見て考える必要がありそうです。


山田浩之

北海道大学大学院農学研究科・森林管理保全学講座

川底に堆積した細粒土砂(写真上)と、
その中に産卵され死滅した
サクラマスの卵(写真下)。