展示見聞録 目黒寄生虫館「1,2階・展示室」
東京都目黒区に世界でもただ一つの寄生虫の博物館「目黒寄生虫館」があります。1階と2階が展示室、3階から上の階は研究室や資料室になっています。
寄生虫とは何か?1階では寄生虫の基本的な概念を中心に紹介。2階からは各論に入り、拡大ろう模型、標本、資料、解説パネルによって、様々な寄生虫の生活史や人との関わりが紹介されています。
館内には標本がずらりと陳列され、全部で約300点にもなるそうです。やはり展示の目玉となっているのは8.8mのサナダムシ。他にもカメの目に寄生したウミエラビルの標本も印象的で注目を集めているようです。
研究員の荒木潤さんのお話では、「ここでは多くの標本を陳列して紹介するとともに、パネルを使って図と実物を対応させて、わかりやすく解説するように心掛けています。」とのこと。実際にパネルの文章はわかりやすい用語で短くまとめられ、イラストや写真の使い方にも理解を促すための工夫が見られました。
年に1回、特別展が開催され、昨年は「パラサイト・カップル」と題して、フタゴムシ等、2匹がくっついた奇妙な寄生虫の仲間が紹介されました。また、夏休みには小学校高学年から中学生を対象に、身近な寄生虫を調べる魚の解剖等の体験プログラム等も行われているそうです。
寄生虫は人の生活に直接あるいは間接的に関わるテーマとして人々の関心も高く、取材した日にも多くの人が訪れていました。最初は気持ち悪がったり怖がったりしていた見学者も、展示を観覧しているうちに寄生虫の不思議な世界に引き込まれ、無言になってじっと標本や写真に見入っていました。多くの標本に加え、見学者の表情や態度の変容もこの館の見どころの一つと言えるのかもしれません。
吉冨友恭
(独)土木研究所 水循環研究グループ 河川生態チーム