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展示見聞録 蔵前水の館-東京都下水道局-

 皆さんは本物の下水道管の中を間近に見たことがあるでしょうか。中には刑事が犯人を追いかける映画のワンシーンが浮かぶ人もいるかもしれませんが、私たちにとってはなかなか馴染みのない場所だと思います。

 「蔵前水の館」は幹線工事現場を活用して整備された本物の下水道管の中を見学できる東京都の区部で唯一の施設です。平成13年に一般公開されるようになりました。

 下水道局の担当の方の案内で、地中へと続く階段を降り、地下30mにまで潜入します。すると、薄暗い中に、内径6.25mもの大きな下水道管の内部を間近に見下ろすことが出来ます。この下水道管は浅草橋幹線と呼ばれ、全長が5.8kmあります。文京区や台東区の生活雑排水や雨水が集められ、荒川区にある三河島水再生センターへと運ばれていきます。

 下水道管に沿って送泥管が設置されていましたが、これは今後、泥を一括処理するために水と分けて送るために使用する予定のものだそうです。上部を見ると、最近になって私たちの生活との関わりが深くなった「光ファイバー」が束になって通っています。

 下水道管の上階にある展示フロアには、下水が地上から効率よく下水道管へ送られるためのドロップシャフト(らせん状に水が流れ落ちる構造の管)の仕組みを再現した水路模型、老朽化した下水道管内面の補強のための様々な素材や工法、汚泥を再利用して作られたメトロレンガ等が展示されています。

 近年、処理水は、流量が減少した河川に流す等、環境用水利用としての再利用にも使われ、清流復活のためにも役立っています。実際にこの処理水を利用し、多摩川に生息する魚類等を飼育した展示のある「多摩川ふれあい水族館」も東京都下水道局の施設です。

 東京都下水道局の展示施設で強調されていたメッセージは、「家庭の排水口から油を流さないこと」。流された油は、詰まりや悪臭の原因になり、下水管自体にも大きな負荷がかかります。

東京都下水道局総務部広報サービス課の鶴川義夫さんは、「東京都の下水道普及率は区部では100%と高く、多くの人にとって整備されていて当たり前の存在になってしまっているが、このような展示施設での体験を通して、多くの人に下水道の役割の重要性を再確認してもらい、下水道に関心を持ってもらいたい。」とお話しされていました。

 「蔵前水の館」は、事前に電話連絡を入れれば誰でも見学することが出来ます。皆さんにも是非、日々の生活に密接に関わる下水道をもっと身近に感じて頂ければと思います。


吉冨友恭

東京学芸大学環境教育実践施設助教授

下水道管(浅草橋幹線)
蔵前水の館外観(地上入り口)
階段を降りて地下30mへ
ドロップシャフト解説展示