高水敷切下げ時期に配慮し樹林化の抑制を
河川生物の生息密度は、底質や水際植生、瀬・淵などの棲み場の状況によって異なるほか、餌量ポテンシャルによっても影響を受けています。例えば、付着藻類を摂食するヤマトビケラ属は、付着藻類に反応し、付着藻類量がより大きい場所に移動することが知られています。また、同じく付着藻類を摂食するボウズハゼは、日射量が大きい場所、すなわち、付着藻類の生育がよい場所に多く集まることが報告されています。アユも付着藻類を摂食する代表的な魚ですが、果たしてアユの摂食行動は、付着藻類の状態の違いによって影響を受けているでしょうか? これを明らかにするため、実験河川を用いて実験を行いました。
実験河川河床に河床付着膜の状態(付着藻類量、付着藻類の群集構造、細粒土砂の沈積量など)が異なる3タイプの玉石(直径15cm程度)を各区間に設置し、アユの摂食行動を観察しました。アユの摂食は、細粒土砂が沈積した付着藻類量の小さい石よりも、付着藻類量が大きく、細粒土砂の沈積が少ない石を設置した区間でより多く確認されました。また、細粒土砂が沈積した付着藻類量の小さい石が設置された区間においては、石表面の付着膜よりも、仕切りのために設置した木製板表面に生育した付着藻類を多く摂食する傾向がみられました。アユは餌としての河床付着膜の状態に対して選択性があり、河床付着膜の状態の違いによって、アユの摂食行動は影響を受けることが明らかになりました。この結果は、例えば、様々な要因によって河床付着膜の状態が変化した場合、アユの生息密度が変化する可能性があることを示唆するものと考えられます。
皆川朋子
福岡大学工学部 社会デザイン工学科/ 前(独)土木研究所 自然共生研究センター