河原にはどんな昆虫が生息する?
多くの河川には玉石や砂が一面に広がる河原が見られます。一見すると生えている植物もまばらで昆虫がいそうな環境には見えません。しかしよく観察すると、そこには河原に特徴的に生息する昆虫がいることに気づきます。代表的な種としては、ツマグロキチョウ、ミヤマシジミ、カワラバッタ、カワラハンミョウなどがあります。これらの昆虫は河原に生息する理由によって、大まかに2通りのタイプに分けられます。
まずひとつめは河原に生育する植物を餌としている種です。例えば、ツマグロキチョウはカワラケツメイのみ、ミヤマシジミはコマツナギのみを幼虫の餌としています。これらの植物は河原に多く生育しているため、それを餌とする昆虫も河原に生息するようになったと考えられます。
もうひとつは、乾燥した裸地的な環境を好むために河原に生息する種です。例えば、カワラバッタの近似種は中央アジアの砂漠を中心に分布していることから、内陸の乾燥した環境に適応して種分化したと推測されます。しかし、湿潤な日本では生息に適した環境は維持されにくく、その中で比較的類似した環境である河原に生息場所を移すことで種を維持してきたと考えられます。また、河原を構成する材料によって生息する種は異なり、同じ河川でも、カワラバッタは玉石河原に、カワラハンミョウは砂地に限って生息しています。
これらの昆虫の生息環境は、本来の河川環境の特徴とも言える洪水による河道の変更や河川敷の裸地化、植生の破壊が起き、そこからの植生の回復がくり返されるといったシステムによって維持されています。
須田真一
東京大学保全生態学研究室/前土木研究所 環境部 緑化生態研究室