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2023年3月22日から24日にかけて、約1万人の参加者が国連本部(ニューヨーク)に、あるいはオンラインで参加し、「国連水会議2023」が開催されました。水に特化した国連会議の開催は、1977年3月にマル・デル・プラタ(アルゼンチン)で開催されて以降、46年ぶりとなります。本会議は、SDG6を始めとする水関連の国際目標の達成に向けた行動を加速化するため、国連にて設定された『国際行動の10年「持続可能な発展のための水」2018-2028』の中間評価(レビュー)の場として開催されました。
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(国土交通省提供写真) |
23日には、エジプトと日本が共同議長を務めたテーマ別討議3「気候、強靱性、環境に関する水」が開催され、ICHARMがこれまでの国際会議で主張してきた「知の統合の実現」、「ファシリテーターの育成」、「End-to-Endのアプローチ」を通して、コロナ禍後のレジリエントな社会に向けた「ゲームチェンジャー」として科学技術を位置付けることが、提言(Key Messages)の一つに盛り込まれました。
テーマ別討議3の提言(抜粋)
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水は、災害に対してより強靭で適応力のあるポストコロナ社会を築くために決定的な役割を果たす。意思決定者の判断は、事実に基づいてタイミングよく行われるべきであり、そのために科学技術が重要となる。 次の3つの行動を通じて、科学技術を強靭なポストコロナ社会を築くための「ゲームチェンジャー」と位置付ける。(1)特に観測、モデリング、データ統合に焦点を当てたオープンサイエンス政策を加速しながら、「知の統合」を促進する、(2)「ファシリテーター」の育成、すなわち、現場で幅広い科学的・伝統的な知見を用いて専門的アドバイスを提供し、問題解決に導く人材を育成する、(3)エンドツーエンドのアプローチをとりながら領域や異なるレベルのセクター間を超えて協働する。 |
この提言は、本会議最終日の全体討議において上川陽子総理特使(衆議院議員)から報告されました。
本会議に先立ち、ICHARMは上記3つの概念を「Water Cycle Integrator (WCI:水循環の統合)」として「Water Action Agenda(水行動計画)」(下記コラム参照)に登録しており、会議後に公表された「国連総会議長の会議サマリー」では、テーマ別討議から得られた提言(key messages emerging from the interactive dialogue)に、「Water Cycle Integrator (WCI)」が固有名詞として以下のように掲載され、国際社会にむけて発信されました。
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特使(右)とエジプトのスウィリアム水資源・灌漑 大臣(左)(国土交通省提供写真) |
(国土交通省提供写真) |
テーマ別討議から得られた提言(抜粋)
ICHARMは、今後もWCIの概念を踏まえつつ、国内外での活動を進めてまいります。
【参考】
<国連水会議2023 公式ページ>
https://sdgs.un.org/conferences/water2023
<国連水会議2023 テーマ別討議3 共同議長提言>
https://sdgs.un.org/sites/default/files/2023-04/ID3%20Key%20message%20%281%29.pdf
<国連水会議2023 「国連総会議長の会議サマリー」>
https://sdgs.un.org/sites/default/files/2023-05/FINAL%20EDITED%20-%20PGA77%20Summary%20for%20Water%20Conference%202023.pdf
「Water Action Agenda(水行動計画)」は、「国連水会議2023」の一つの重要な成果です。『国際行動の10年「持続可能な発展のための水」2018-2028』の10年間の後半と、『持続可能な開発のための 2030 アジェンダ』の後半における進展を加速するための、様々な主体による700以上の自発的な約束(commitment)をまとめたものとなっており、SDG6達成のためのカギとみなされています(国連総会議長の会議サマリーより)。
以下、「Water Action Agenda」にICHARMが提案し採用された「Water Cycle Integrator」に関する簡単な説明です。詳細は、下記国連ホームページをご覧ください。
<Water Action Agendaについて>
https://sdgs.un.org/conferences/water2023/action-agenda
<「Water Cycle Integrator」について>
https://sdgs.un.org/partnerships/water-cycle-integrator-wci
ICHARMは、これまでにフィリピン・ダバオ市や西アフリカ11か国などにおいて、洪水早期警報や気候変動の影響評価などの開発や、ファシリテーター育成を目的にしたeラーニングワークショップを行ってきました。
これらの経験を活かし、WCI は熊本水イニシアチブの一環として、加盟国およびユネスコカテゴリー 2センターおよびユネスコチェアと協力して、地方、国、地域レベルで開発および適用されます。また、これは、ユネスコ第9期政府間水文計画(IHP-IX)の「水文学システム、河川、気候リスク、および水・食料・エネルギーの結びつき」に関する横断作業部会の活動とも密接に関連しています。
「Water Cycle Integrator(水循環の統合)」は、以下のように「知識統合」、「能力統合」、「プロセス統合」の3つの機能から構成されます。
WCIに関連した活動については、適宜ICHARMニュースレターでも紹介していきます。