土研ニュース

理事長からの挨拶 〜土木研究所Webマガジン発行にあたり〜

理事長 坂本忠彦

 このたび、新たな試みとして「土木研究所Webマガジン」を発行することとなりました。今回発行する「土木研究所Webマガジン」は、対象を一般者向けとしております。土木研究所ではどのような研究をしているのだろうか、またその研究がどのように社会に活かされているのだろうか、広く一般の方に知ってもらうことを目的として作成しております。土木研究所のさまざまな研究の紹介、講演会や研究施設の見学、体験実験の紹介等、最新の情報をわかりやすく発信していく予定です。この「土木研究所Webマガジン」を見た読者が、“土木”と“研究所”をより身近に感じ、興味を持っていただけたら幸いです。
 土木研究所の旬の情報を皆さまにご紹介していきますので、今後ともよろしくお願いいたします。

(独立行政法人土木研究所 理事長 坂本 忠彦)

土木研究所講演会を開催しました

平成19年度 土木研究所講演会
平成19年度 土木研究所講演会

 去る10月10日(水)、東京虎ノ門の日本消防会館において平成19年度土木研究所講演会が開催されました。本講演会は、土木研究所で実施している調査研究の成果や最近の土木技術に関する話題・動向等について幅広く一般に紹介するものであり、昭和44年に始まり、今回で35回目を迎えました。

 今回は、「構造物の維持管理」「地球温暖化」という社会的に関心の高いテーマを取り上げ、各テーマについて外部有識者による講演と土研職員による研究の取り組みに関する講演を組み合わせるという新しいスタイルにて開催しました。
 構造物の維持管理について、本年春の叙勲にて紫綬褒章を受章された東京大学の藤野陽三先生と福井グループ長に、道路橋に関する維持管理のあり方や問題点等について論じていただいたほか、劣化損傷の実態と対策技術の開発状況についても講演していただきました。
 また、地球温暖化については東京大学の住明正先生と竹内センター長に、温暖化の進行と社会の脆弱性の増加により深刻さを増している水災害に対応するためにどのようなパラダイムシフトが必要か、また社会は、新しい環境に適応するために一体何から始めなくてはならないのかを論じていただきました。
 参加された方々からのアンケートによる土木研究所に対する要望では、「土研のイメージは一般市民には判明しにくい仕事をしていると思っていた。今回の講演を聞いて直接的なイメージを感じた。これからも是非とも国民に直接的な行動をお願いしたい」「研究成果をプラントとしてまとめ、社会に発信していくことが大切で、土研の役割は大だと思います」等の意見が寄せられ、土木研究所に対する期待の大きさが窺い知れる内容となっています。

 来年度以降も土木研究所の優れた研究成果を普及する場として、よりよい講演会づくりに一層努めて参りたいと思います。 

講演 : 大切な道路橋を長持ちさせるために 〜劣化損傷の実態とその対策技術の開発〜
・「社会基盤の保全に向けて 〜維持管理のあり方〜」
           東京大学大学院工学系研究科教授 藤野氏
・「最近の道路橋の劣化損傷の特徴と対策技術の開発状況について」
           構造物研究グループ 福井グループ長
トピック :
・「最近の地震被害の傾向と技術課題」
           耐震研究グループ 松尾グループ長
特別講演 :
・「気候変動と水循環と日本文明」
           (財)リバーフロント整備センター理事長 竹村氏
講演 : 地球温暖化時代の水防災
・「地球温暖化問題の急展開─IPCC第4次報告書の意味」
           東京大学サステイナビリティ学連携研究機構 統括ディレクター・教授 住氏
・「温暖化適応のための水防災」
           水災害・リスクマネジメント国際センター 竹内センター長
土研開発工法連続紹介 :
・「環境にやさしい鋼橋塗装膜はく離剤工法 『インバイロワン工法』」
           材料地盤研究グループ新材料チーム 守屋総括主任研究員
・「コスト縮減に寄与する複合構造横断函渠工の設計と施工」
           寒地基礎技術研究グループ寒地構造チーム 石川上席研究員
   

寒地土木研究所講演会開催のお知らせ


昨年度行なわれた講演会
札幌市文化会館 クリックすると拡大します
札幌市文化会館(クリックで拡大)

 平成19年12月5日(水)、札幌市教育文化会館において、第21回寒地土木研究所講演会を開催します。
 本講演会は、積雪寒冷地に関連する土木技術の研究成果等の話題についてより多くの方々にご紹介するために昭和61年に始まり、今回で21回を数えるものです。当初200名程度であった来場者数も、近年では例年500名以上の皆様にお越しいただける規模となり、研究成果普及活動として着実に定着して参りました。
 今回の講演会では、三井物産株式会社理事北海道支社長木雄次氏をお招きし、「グローバルな視点でみた北海道: 七つの宝に期待」との演題で、ご講演をいただくとともに、内部講師5名から研究成果報告並びに新技術普及について紹介させていただきます。

日  時 : 平成19年12月5日(水)
       13時15分開演
       (開場:12時15分)
場  所 : 札幌市教育文化会館
       札幌市中央区北1条西13丁目

※予約不要、入場無料です。
※最新の開催情報については下記にお問い合わせください。

(問い合わせ先 : (独)土木研究所寒地土木研究所 企画室第3グループ)

【第21回寒地土木研究所講演会  講演内容】

特別講演 :
「グローバルな視点でみた北海道: 七つの宝に期待」
三井物産株式会社理事北海道支社長 木雄次氏

一般講演 :
1.「複合地盤杭工法の設計施工法  〜建設コスト縮減の新しい基礎構造の開発と実用化〜」
   寒地土木研究所寒地地盤チーム 冨澤幸一主任研究員
2.「冬も安全快適なみなとを目指して  〜港内結氷問題を中心に〜」
   寒地土木研究所寒冷沿岸域チーム 山本泰司上席研究員 
3.「積雪寒冷地の舗装再生技術  〜リサイクル材を活用した舗装技術〜」
   寒地土木研究所寒地道路保全チーム 田高淳上席研究員 
4.「農村における地域エネルギーと環境保全 〜バイオマスを活用する新技術〜」
   寒地土木研究所寒地農業基盤研究グループ 秀島好昭グループ長・特別研究監 
5.「自然的原因による重金属汚染の対策技術  〜寒地土木研究所とつくば中央研究所の連携研究紹介〜」
   つくば中央研究所地質チーム 佐々木靖人上席研究員
   

一般公開(土木の日)開催のお知らせ 〜今年もやります!「土木の日2007」一般公開〜

土木の日は十一月十八日
楽しいよ!みんなで来てね!入場無料だよ!11月10日(土)
ロボット建設機械
リモコンパワーショベルを操縦体験
リモコンパワーショベルを操縦体験

 11月18日を「土木の日」と呼んでいることをご存知ですか?
 これは、土木学会が1987年(昭和62年)に定めたものであり、日本工学会(土木を含むあらゆる工学分野の専門家の団体)が1879年(明治12年)に創設された日でもあります。
 また、11月18日を漢数字で書いてみると、右の図のようになります。
 土木の日(11月18日)にちなみ毎年(今年で14回目)行っている研究所の一般公開を、11月10日(土) 9:30〜15:00(受付は14:00まで)に開催します。
 研究所の公開は、将来を担う小中学生や広く皆様に、普段なじみのない研究所の仕事や公共事業について理解いただくことが目的です。今年も来場者の皆様に有意義な時間を過ごしていただけるよう、“見て、触って、楽しく遊びながら土木について知っていただくことのできる”様々な催しを準備しております。
 ご家族、ご友人等とお誘い合わせの上、ぜひお越しください。

○公開施設クイズ&スタンプラリー
ロボット建設機械(リモコンパワーショベルを操縦体験、風船割りゲームができます。)/舗装走行実験場/試験走路/高度道路交通システム(ITS)/ダム水理実験施設/土石流発生装置/輪荷重走行試験機/騒音実験施設/働く自動車

○土木体験教室
石の博士になろう! /トンネルの博士になろう!/水がきれいになるまで・微生物をさがそう!&汚泥の有効利用/景観シミュレーション/身近な動物や木を知ろう!

○その他のイベント
ボール紙でつくる橋コンテスト(表彰式および展示)/バンド演奏/和太鼓演奏/バイオリン演奏/お茶会             など

(問い合わせ先 : 研究企画課)

   

第2回ものづくり日本大賞受賞 〜守屋 進 総括主任研究員が「内閣総理大臣賞」受賞!!

内閣総理大臣賞 賞状
左から2番目が守屋総括主任研究員
左から2番目が 守屋総括主任研究員

 平成19年8月10日、総理大臣官邸で「第2回ものづくり日本大賞」内閣総理大臣表彰が行われ、土木研究所と山一化学工業(株)が共同開発した「インバイロワン工法」が産業社会を支えるものづくりとして認められ、同技術の開発を行った土木研究所新材料チームの守屋総括主任研究員が山一化学工業(株)の臼井明氏、荒川伸彦氏とともに受賞、安倍内閣総理大臣から表彰状を授与されました。
 ものづくり日本大賞は、我が国産業・文化を支えてきた「ものづくり」を承継・発展させるため、ものづくりを支える人材の意欲を高め、存在を広く社会に知らせるために創設されたものです。ものづくりの中核を担う中堅人材、伝統の技を支える熟練人材、将来を担う若手人材をバランスよく表彰するもので、チームワークが我が国の強みであることを踏まえ、個人のみならず、グループも受賞の対象としています。第2回目の今回は、20件45名(うち、国土交通省関係は7件、14名)が内閣総理大臣賞を受賞しました。

   

自然共生研究センター公開実験 〜石礫吊り上げによる魚類捕獲実験〜

石のすき間を泳ぐ魚たち
石のすき間を泳ぐ魚たち
石のすき間を泳ぐ魚たち
ワイヤーで連結した石礫を重機で吊り上げます
ワイヤーで連結した石礫を
重機で吊り上げます。
採捕された魚介類をその場で確認。どんな魚がいたのかな?
採捕された魚介類をその場で確認。
どんな魚がいたのかな?

 河川中流域の河岸には大小様々な石礫が見られることが多く、これらが作り出す石のすき間、すなわち、空隙がウナギやフナ等魚の住む場所になると信じられてきました。実際の河川の工事でも、護岸に穴を設けたり、石を河岸に並べたりする場合がありますが、空隙がどのような魚にどの程度利用されているかについては研究がなく、効果については?でした。そこで、自然共生研究センターの魚が住める実験用の川を用い、石のすき間にできる空間が魚にどの程度利用されているかを実験的に明らかにし、川の工事に関係する方々に見てもらうことにしました。
 石礫のサイズは径300mm、径100mmで個々の石礫がチェーンで連結しています。重機で持ち上げると、空隙内の魚介類を石礫の下に事前に設置した網に落ちるため、全ての魚介類を捕獲できます。実験では、その場で採れた魚介類を確認してもらい、礫サイズによって生息魚種が異なる点等を説明しました。定員40名に対して52名の参加者があり、実験を見てもらうこの企画は概ね好評であったと感じています。

 一般に、我々研究者の行った成果は研究論文という形で情報発信されますが、図表等に姿を変えた現象は正確である一方で、実感が乏しい知識となりがちです。公開実験は体験を通して現象を理解し、納得できる点に意義があることから、自然共生研究センターでは成果を解りやすく普及する上で有効な手法と考えています。今後も公開方法をもっと工夫して、解りやすい成果普及に努めて行きたいと考えています。

( 問い合わせ先 : 自然共生研究センター)

   

ルーマニア・アカデミー 地理学研究所との間で研究協力協定を締結!

ルーマニアの位置
ルーマニアの位置(クリックで拡大)
首都ブカレスト市内の様子
首都ブカレスト市内の様子
現地調査地の一例(シリウダム貯水池の地すべり)
現地調査地の一例
(シリウダム貯水池の地すべり)

 9月20日に、ルーマニアの首都ブカレストにおいて、ルーマニア・アカデミー 地理学研究所と土木研究所の間で地すべり等の研究協力に関する協定を結びましたので紹介します。

 ルーマニアは、日本ではあまりなじみがありません。しかし、中世の香りただよう古き街並みが残る自然豊かな美しい国であり、ドラキュラ伝説の発祥の地でもあります。ブカレストの背後には脆弱な地質のカルパチアン山脈(標高2000m級)がそびえ、豪雨や地震などによって、地すべりや斜面崩壊、泥流などの土砂災害が発生しています。ルーマニア・アカデミー 地理学研究所では、地形や地質等を考慮した地すべり発生危険度をはじめとする土砂災害に関する研究を行っています。このたび締結した協定は、両研究所の研究交流を通じて、地すべり土塊の崩落予測や土砂災害の危険度評価技術を発展させることを目的としています。

 今回の協定調印式に併せて、カルパチアン山脈にて土砂災害の現地調査を行いました。固結度の低い砂地盤で生じた地すべりや日本ではほとんどみられない泥灰岩*地質で発生した泥流災害地等を踏査し、ルーマニアにおける土砂災害の実態を知ることができました。

 今後は、両研究所が手を取り合って共同研究を進めることにより、両国の地すべり災害の被害軽減に貢献したいと思います。

*泥灰岩(マール):炭酸塩鉱物成分を25〜75%含み、粘土分が多い細粒石灰質堆積物が固まった岩石であり、水を通し難く、風化しやすい性質がある。

(問い合わせ先 : 地すべりチーム)

   

修士課程 「防災政策プログラム水災害リスクマネジメントコース」始まる!

2007年10月4日 開講式集合写真
2007.10.4 開講式集合写真
研修生代表の挨拶 Mirta Baral氏(ネパール)
研修生代表の挨拶
Mirta Baral氏(ネパール)

 ICHARMは、修士課程「防災政策プログラム 水災害リスクマネジメントコース」を今年度から新設し、2007年10月9日から講義を開始しました。これは、10月10日の『国際防災の日』を含む週にあわせたものです。 
 洪水を始めとする水関連災害は、世界中至る所で発生しています。今年においても、中国南部・イギリス・インド・ネパール・アフリカなどで大洪水が発生し、甚大な被害が発生しました。このような被害は、いかに現代社会が水災害に脆弱であるかを示しています。今後、これらの災害を引き起こす外力は、気候変化によりますます厳しくなると考えられます。
 このような状況に対処するためには、災害が頻発している発展途上国における洪水関連専門家の育成が喫緊の課題です。そのような専門家には、災害に対する平素からの備えや災害時の復旧・復興に対して技術的・社会科学的な見地から、災害マネジメントに必要な幅広い知識を習得することが求められています。
  このような要請に応えるため、ICHARMは(独)国際協力機構(JICA)、政策研究大学院大学(GRIPS)と連携して、標記の修士課程を新設しました。研修生は来年の9月まで講義、演習、現地実習、個別研修等でICHARMを拠点として学習・研究活動を行います。ICHARMはより良い学習環境を提供すべく努力していく所存です。皆様のご理解、ご協力をいただきますようよろしくお願いいたします。

開設課程 : 
修士課程 「防災政策プログラム 水災害リスクマネジメントコース」

特徴 :
・ 研修生の知識向上だけではなく、自国の問題の解決策を提示できる能力を向上させる『課題解決型』 の研修
・ 『1年で修士号』 を取得出来る研修
・ 『理論より実務』 を重視する研修

平成19年度の参加人員 : 
計 11名
(バングラデシュ、中国、インド、フィリピン、ネパール、日本)

※ICHARM:International Centre for Water Hazard and Risk Management under the auspices of UNESCO

( 問い合わせ先 : ICHARM 国際普及チーム)

   

ICHARMシンポジウム開催のお知らせ
「ICHARM Quick Report on Floods 2007 -International collaboration for adaptation- 」

 地球温暖化と急速な開発・都市化により、洪水を始めとする世界の水関連災害は、近年急激に増加しています(右図参照)。

  今年も世界中で大きな洪水災害が多く発生しました。例えば、6月から8月にかけては、中国南東部で洪水が立て続けに発生し、1300人が亡くなりました。また、同時期にはイギリスでも未曾有の洪水が発生しました。さらに、8月には北部インドやバングラデシュ、ネパールでも2000万人以上に影響を与える大洪水が発生し、9月にはアフリカでも17ヶ国に被害を及ぼすような大雨を経験しました。

 このような中、ICHARMは、来る11月6日にシンポジウムを開催し、それらの洪水災害に直接関わった専門家を招待し、災害の状況を報告していただくとともに、世界における地球温暖化の影響と洪水災害減少に向けた各国の取り組みについてのパネルディスカッションを行います。

 シンポジウムの概要は以下のとおりです。

日時 : 2007年11月6日(火) 10:00〜17:00

場所 : ICHARM棟内1階講堂 (茨城県つくば市南原1−6)

講演者 :
日本における2007年の洪水報告…(人選中) 
中国における2007年の洪水報告…
     中国水利水電科学研究院 院長 Dr. KUANG Shangfu
インド・ネパールにおける2007年の洪水報告…(人選中)
イギリスにおける2007年の洪水報告… 
     イギリスブリストル大学水環境管理研究センター
     センター長 Prof. Ian David Cluckie


言語 : 英語(通訳なし)

  シンポジウムに参加されたい方は、10月31日(水)までにicharm@pwri.go.jpあてに氏名・所属をお知らせください。定員40名で、申し込みが定員を上回った場合は抽選とさせていただきます。

(問い合わせ先 : ICHARM 国際普及チーム)