土研ニュース

韓国道路公社 道路交通技術院と研究ワークショップを開催しました

 ワークショップの参加者

ワークショップの様子

試験走路(手前2車線)

 2008年2月27、28日に、韓国ソウル近郊の華城市において、韓国道路公社 道路交通技術院(Korea Expressway Corporation、 Expressway & Transportation Research Institute:ETRI)との研究ワークショップを開催しました。土木研究所と道路交通技術院は研究協力協定を締結しており、第1回の今回のワークショップでは両機関のコンクリート分野の研究を対象としました。

 ワークショップでは、高強度コンクリートの利用技術とコンクリート構造物の耐久性に関する研究成果の報告と意見交換が行われました。現在、韓国道路公社では高強度コンクリートの使用を検討しており、我が国での使用実績や構造物マネジメント技術チームの過去の実験結果を踏まえ、使用時の問題点などについて意見交換を行いました。
 また、コンクリート構造物の耐久性に関する話題として、土木研究所から、コンクリートの品質管理、塩害やアルカリ骨材反応により劣化した構造物の診断・補修技術について研究成果を報告しました。道路交通技術院からは、塩害を受けるコンクリート構造物の劣化予測、アルカリ骨材反応によるコンクリート舗装の損傷について報告がありました。

 また、ワークショップの一環として、道路交通技術院の試験走路を見学する機会を得ました。この試験走路は、全長7.7kmと大規模で、複数の舗装工法の耐久性を検討することを目的として2002年に建設されました。供用中の高速道路に併設しており、試験走路を年に一度供用し、実際の交通荷重の影響を舗装内部に埋め込んだセンサーでモニタリングしているとのことでした。

 既設コンクリート構造物の維持管理は、我が国だけでなく韓国においても重要な研究課題として認識されており、意見交換等を通じて両国の研究開発の現状について把握することができました。今後も両機関の情報交換の場として、継続的に本ワークショップを開催していくことが期待されます。


(問い合わせ先 : 橋梁構造研究グループ)

ロボット建設機械のデモンストレーション開催

     

イメージ図

自動掘削・自動積込の状況

デモ会場での議論の状況

 平成20年2月25日土木研究所建設機械屋外実験場において、土工(油圧ショベルの掘削・積込作業)を対象として、ある程度の自律した作業ができるロボット建設機械のデモンストレーションを行いました。このデモは、国土交通省総合技術開発プロジェクト「ロボット等によるIT施工システムの開発」(平成15年度〜平成19年度で実施)において「ロボット等によるIT施工システム研究委員会(委員長:筑波大学油田教授)」、「分科会T・ロボット施工分科会(委員長:東京大学淺間教授)」の皆様のご指導を戴きながら進めてきた成果を、委員の方に報告する目的で行われ、先端技術チームが事務局を務めました。
 本プロジェクトでは基盤となる以下の3つの技術((1)自律施工に必要な3次元情報として周囲環境を認識する技術(工事の進捗に伴って、時々刻々変化する周囲環境の認識)(2)操作に必要な3次元情報を表示する技術(マンマシンインターフェイス)(3)施工動作の自動化技術(ロボット建設機械の制御技術)の開発を行い、開発した基盤技術)を統合し、IT施工システムのプロトタイプを開発しました。今回はその機能をデモしました。
 当日は、筑波大学油田委員長挨拶で始まり、概要説明、デモシナリオによるデモ、質疑応答、議論を行いました。
 デモ内容としては、災害現場等の無人化施工をイメージした模擬現場試験を実施するもので、油圧ショベルによる掘削・積込作業現場から離れた場所に遠隔操作室に見立てたテント小屋を設け作業指示、監視を行うというものです。遠隔操作室には、今回開発したCG画面(コンピュータ・グラフィックスにより設計と現況地形の平面図、断面図を含む3D表示、建機の状態をリアルタイムに3Dモデルで表示など)、ビデオ重ね合わせ画面(建機に搭載したビデオカメラからの映像に設計モデルを重ね合わせた画像をリアルタイムに表示)が設置され、遠隔操作による建機の移動、CG画面による掘削・積込位置の確認、自動掘削・自動積込作業監視、CG画面による出来形の確認などを行いました。
 デモ終了後、委員の先生方による活発な議論がなされ、また貴重なご意見等を多数戴きました。
 今後、無人化施工による作業の作業効率のさらなる改善、この技術をベースとして、一般施工現場での省人化及び労働災害の軽減を図ることが期待されるところです。
 最後に、本デモの準備、運営においては様々な方々のご協力を仰ぎました。ここに、参加いただいた皆様、ご協力いただいた関係各位に感謝の意を表します。




(問い合わせ先 : 先端技術チーム)

   

日米治水及び水資源管理会議つくば会合が開催されました


米国陸軍工兵隊から6名の技術者が来所

坂本理事長による歓迎挨拶

プレゼンするChristopher N. Dunn所長

 平成20年2月27日、日米治水及び水資源管理会議つくば会合が開催されました。

 これは、前日2月26日に三田共用会議所で開催された同会議(平成15年3月18日に日本国国土交通省と米国国防総省陸軍工兵隊の間で調印された合意文書に基づく第4回目の会議)に引き続いて、米側代表団のうち水文技術センターのダン所長を団長とする6名がつくばを訪問し開催されたものです。
 ちなみに米国では、陸軍工兵隊が国防活動の一環として国家レベルでの治水事業を担当しています。土木研究所ICHARMは、昨年6月ワシントンDCにある陸軍工兵隊傘下の水資源研究所(IWR)と洪水災害防止・軽減に関する包括的な研究協力協定を締結しました。

 27日当日は、ICHARM棟1階の講堂にて、地球規模気候変動への適応策を含む洪水リスク管理、堤防の安全性評価及び河川環境管理といったテーマについてのプレゼンテーションとそれをベースにした質疑や意見交換が行われました。プレゼンテーションでは、陸軍工兵隊水文技術センター所長Christopher N. Dunn氏による「工学的、数学的なアプローチによるリスク管理」を始め、土木研究所側からは、
  「水関連災害管理の課題」
  「河川堤防の安全性評価のための統合物理探査技術」
  「河川環境の歴史的変遷をふまえた河川環境の再生」
の3点が発表されました。
 地球規模気候変動による大規模洪水の発生頻度増大が予想される中で、納税者のコンセンサスを形成しつつ、自然環境の保全にも十分配慮した効果的な治水対策をいかにして着実に進めていくか、両国がそれぞれ直面する課題解決に向けた情報や経験を共有するための日米連携の場として、今後ともこの会議が友好的に継続されることが望まれます。

   

植栽型浸透トレンチに関する施工見学会


植栽共存型浸透トレンチのイメージ

施工見学の様子

質疑応答の様子

 近年、特定都市河川法の施行や都市内水害の緩和、地下水涵養による自然環境への配慮、ヒートアイランド対策の水がめとして、公園や道路に雨水を地面に浸透させる「浸透トレンチ」を設置することで、雨水貯留の手段とすることが求められています。
 しかしながら、道路の歩道部では『ライフラインが多数埋設されていること』また『埋設管の取替え等で頻繁に掘削が行われること』から、都市部にいくほど、浸透トレンチを設置することが困難であるのが実状です。
 そのため、頻繁な掘削がなくライフラインの縦断埋設がない場所としての、植栽帯に注目し、植栽と共存が可能な浸透トレンチ(以下「植栽型浸透トレンチ」)の開発を行うものです。
 施工技術チームでは、自治体、ゼネコン、建設コンサルタント、メーカーを対象に植栽型浸透トレンチの施工見学会を3月19日に開催し、植栽型浸透トレンチのご紹介ならびにご提案を行いました。
 当日は、自治体・協会から51名、民間会社から22名、合計73名にご参加いただきました。
 はじめにICHARMの講堂にて植栽型浸透トレンチの概要を説明した後、施工現場に移動し、各工程での施工の様子を見学し、最後に講堂にてアンケートの記入と質疑応答を行いました。
 植栽型浸透トレンチの最大の利点は、(1)治水機能・地下水涵養機能・ヒートアイランド対策といった多機能を有する点、(2)非常に簡単な施工で作成でき、安価である点、(3)公園部の浸透トレンチは点状に貯留・浸透するのに対し、植栽型浸透トレンチは線状に貯留・浸透できるため、浸透トレンチで対象エリアを囲い込むことで、街区・広域単位での定量的な評価・設計が可能である点です。
 この植栽共存型浸透トレンチに対し、参加者の関心は非常に高く、様々な質問を頂くことになりました。これらの植栽型浸透トレンチの効果を正確に把握・評価するには、実際に現場で作成し、その効果を確認・実証していく必要があります。今回企画した施工見学会を足がかりとして、各自治体、コンサル、ゼネコン、メーカー様と連携し、現場施工とその効果の確認・実証につなげていきたいと考えています。
 最後に、お忙しい中足を運んで頂きました参加者様、今回の施工見学会の準備、運営にご協力頂きました関係者様に深く感謝いたします。

(問い合わせ先 : 施工技術チーム)  

   

ペルー国家防災庁モスケイラ副長官来訪

  

理事長から概要説明を受けるモスケイラ副長官
(写真中央)

液状化再現装置を叩かれるモスケイラ副長官
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 平成20年3月25日に、ペルー共和国国家防災庁モスケイラ副長官及びアルバラード課長が国土交通省関係つくば3機関を訪問されました。この来訪は、国土交通省総合政策局の建設経済交流促進事業(要人招聘事業)により日本に招聘され、国交省関連施策の紹介をする行程の中で、ペルー国の希望によりつくば研究機関の訪問となったものです。
 副長官は、理事長室において研究学園都市設立の経緯等の説明を受け、副長官からは、2007年8月にペルー沖で発生した地震災害に対する日本国の支援についての感謝と、当所研究者からのペルーの防災に対する方法・アイデアを、将来のペルーの防災に役立てられればという発言をいただきました。
 土木研究所における災害関係の研究については、松尾耐震研究グループ長、寺川水災害研究グループ長が、耐震研究グループ及び水災害・リスクマネジメント国際センターにおける研究・研修活動等について説明を行うとともに、藤澤地すべりチーム上席研究員が火山噴火後の土石流監視手法と地すべり斜面の監視手法の紹介をしました。副長官は最新の研究や洪水災害に関する研修に興味を示され、自国での対応等について質問が相次ぎました。
 国土技術政策総合研究所国際会議場においてモスケイラ副長官によるペルー国の概要及び地震災害の現状についてプレゼンテーションが行われ、振動実験施設では、ペルー国の地震で問題となっている液状化現象を再現できる液状化再現装置に興味を示され、実際に装置を叩いて液状化が起きる様子を確認されていました。

千島桜並木の一般公開のお知らせ


千 島 桜

ご家族連れも多数いらっしゃいました
 ライトアップ

 今年も寒地土木研究所構内の千島桜並木の一般公開が行われる予定です。このイベントは平成11年から開始され、今年で10回目を迎えます。毎年多くの皆様に来所いただき、昨年は過去最高の約6,500人の来場者を記録しました。
 千島桜は北海道では道東や道北を中心に、本州では中部以北の亜高山帯、そして千島、サハリン等に自生している落葉低木で、2〜2.5p程度の淡紅色または白色の花をつける北方系の桜です。
 日本で一番最後に桜前線がやってくる名所として根室の清隆寺が有名ですが、清隆寺の桜がこの千島桜です。小さく可憐な花ですが、寒さに強く、ゆっくりながらもしっかりと成長していく様が北海道の代表的な樹木たる所以なのかもしれません。
 現在、寒地土木研究所構内には、構内を流れる精進川沿いに約200本の千島桜が植樹されています。この千島桜は昭和59年、当時の職員が「構内美化の為にも皆が末永く楽しめる植物を植えたい」という願いから、道東の厚岸郡浜中町霧多布の苗木を取り寄せたのがはじまりでした。植樹当所は幼木だった桜も、現在は4〜5mの大きさにまでに成長し、例年5月初旬には一斉に開花して、見る人の目を楽しませてくれます。
 公開は桜の開花に合わせ変動しますが、例年5月初旬に行われます。
 また、現在準備段階中ではありますが、ご好評いただいている桜のライトアップも実施する予定です。夜間の桜も、日中の桜とまた違った趣があり一見の価値があると思います。
 詳細については4月中旬頃から寒地土木研究所ホームページにてお知らせいたしますので、ぜひ一度来所ください。

(問い合わせ先 : (独)土木研究所寒地土木研究所 企画室)


   

寒地土木研究所が新しくなります!


《寒地土木研究所新組織図》

《支所配置図》

 平成20年4月1日から国土交通省北海道開発局が実施する技術開発関連業務等の移管を受け、寒地土木研究所に技術開発調整監以下、寒地技術推進室及び道内4ヵ所の支所(道央、道南、道北、道東)、寒地機械技術チームを新設しました。
 寒地土木研究所では、より良い研究を通じて国民の皆様に快適な生活環境をご提供できるよう、新しい研究分野を含め、研究開発の推進に所内一丸となって取り組んでいく所存です。今後とも当所への御理解、御協力の程、何卒よろしくお願いいたします。

《新組織のご紹介》
■技術開発調整監
・研究課題と技術開発等のコーディネイト など

■寒地技術推進室及び支所
□寒地技術推進室
・寒地における新技術、コスト縮減技術に関する調査等の企画立案等
・成果の指導・普及に関する企画、調整 など
□支所
・寒地における研究課題に関する現地調査等
・寒地における新技術、コスト縮減技術の向上、活用等に係る現地調査 など

■寒地機械技術チーム
・寒地における建設施工技術、施設保全技術の高度化等に関する調査研究 など


(問い合わせ先 : (独)土木研究所寒地土木研究所 企画室)

   

構造物メンテナンス研究センター発足

      

センターの体制

除幕式の様子

 わが国の橋梁を始めとする道路構造物は、厳しい交通需要や自然環境にさらされています。また、高度経済成長期に大量に建設された構造物が一斉に高齢化を迎えます。そのような中で、構造物の健全性を評価し、維持管理する技術の確立を急ぐ必要があります。
 そこで、独立行政法人土木研究所は、平成20年4月1日、従来の3つの研究組織に加えて、既存の研究組織を改編し、新たに構造物メンテナンス研究センターを設置しました。
 構造物メンテナンス研究センターでは、従来のチーム制を廃止し、構造物の設計、施工から維持管理に至るまで、また、維持管理システム、補修技術、予測評価技術、検査技術について一体的な研究に取り組むこととしています。


センターの4つの使命
(1)臨床研究
 道路管理者とともに、道路橋等の構造物の健全な維持管理、地震対策のための問題解決に当たるとともに、その解決につながる研究を行います。
(2)技術の集積と活用
 道路橋のメンテナンス、設計、施工に関する技術、ナレッジの蓄積とその広範な活用を図ります。
(3)新技術の標準化、基準化
 研究成果や集積した技術を社会に還元するためこれらの標準化、基準化を図ります。
(4)技術者教育
 道路管理者、大学、民間から技術者や研究者を受け入れ、ともに技術力の向上を目指します。

研究の3本柱
○ 「荒廃する日本」にしないための研究
○ 「災害脆弱国家・日本」としないための研究
○ 求める性能の提示、評価と基準化

 センターの運営においては、既存の研究の枠組みを越えて、社会や道路管理者のニーズに対して柔軟かつ的確に応えていく予定です。皆様のご支援をいただければ幸いです。

(問い合わせ先 : 構造物メンテナンス研究センター