土研ニュース
土木の日一般公開を開催しました
橋コンテスト受賞記念撮影 |
土石流発生装置 |
「土木の日一般公開」を、11月15日(土)に土木研究所(以下、土研)と国土技術政策総合研究所(以下、国総研)の共催で実施しました。今年で15回目となるこの行事は、957名が来場し、広く皆様に、両研究所が行っている研究や土木事業を理解してもらうことを目的として実施しました。今年も、「ボール紙でつくる橋コンテスト」や実験施設公開、土木体験教室等、各種イベントを行いました。
土木の日(11月18日)とは、土木学会が1987年(昭和62年)に定めたものであり、日本工学会(土木を含むあらゆる工学分野の専門家の団体)が1879年(明治12年)に創設された日でもあります。また、11月18日を漢数字で書いて分解してみると、右の図のようになります。
舗装走行実験場では、様々な舗装に関することや人工衛星を利用して無人で走る荷重車について、説明しました。ここで実験している環境に配慮した舗装についても、模型を使って説明しました。
ダム水理実験施設では、トンネル放流設備から水を流し、水と空気が一緒に流れている様子を見せながら、実際にどのくらいの空気が流れているのか、給気管における風速を来場者の皆さんに予想してもらい、実験上での風速を実物規模へ換算する方法や水理実験の概要を説明しました。
土石流発生装置では、山の斜面の模型を用いて、砂防えん堤(ダム)があるケースとないケースでそれぞれ土石流を発生させ、砂防えん堤が巨石を食い止め、人命や家屋を守っていることを説明しました。 模型実験でも、砂防えん堤のないケースでは、実験に使った土や水が勢いよく噴き出してきましたので、実際の土石流はどれだけ恐ろしいか、それを食い止める砂防えん堤の役割はいかに大きいか実感できたと思います。
振動実験施設では、水槽に砂と水を詰めた模型により、地震時の液状化現象の恐ろしさを再現しました。また、最近の地震による被害事例のパネル展示や被害時に発生した現象を再現した実験のビデオを見てもらいました。お子さんたちは、振動を与えることで簡単に傾き、沈んでいく建物の模型に見入りながら、また、大人の皆さんは、被害事例を見ながら、地震の恐ろしさやそのメカニズム、対策を検討する必要性について理解を深めてもらいました。
他には試験走路と高度道路交通システム(ITS)を公開しました。
また、茨城県内にある関東地方整備局の5事務所(*)の協力のもと、日頃現場で活躍している建設機械、パトロール車、道路標識車や災害時に活躍する災害対策本部車、事業紹介のパネル展示などを行いました。来場者の皆様には、小型ユンボ(バックホウ)による「ボールすくい」や、ヘルメットを被り巡視員気分でパトロール車を背景に記念撮影を楽しみながら、公共事業に対する親しみや理解を深めてもらいました。また、道路標識車には、各種イベントや体験教室の案内も表示し、一般公開の広告塔として活躍頂きました。
その他、土木体験教室、子供たちがボール紙で作った橋コンテスト、吾妻小学校のマーチングバンド、和太鼓、バンド、バイオリン演奏、ゾウさんと記念撮影を行いました。
*霞ヶ浦導水工事事務所、霞ヶ浦河川事務所、常陸河川国道事務所、常総国道事務所、下館河川事務所
(問い合わせ先:総務課、研究企画課)
土研新技術ショーケース2008 を開催しました
発表会場の様子(仙台) |
展示・技術相談の様子(東京) |
インバイロワン工法実演(大阪) |
土研新技術ショーケース2008を10月31日に東京、11月19日に金沢、12月3日に仙台、12月11日に大阪で開催しました。
本ショーケースは、土木技術者の皆さんを対象に発表会形式で技術紹介を行うとともに、パネルや模型等による展示と技術相談を行うものです。これにより、土木研究所単独での研究や民間企業などとの共同研究により得られた有用な新技術を広く普及させることができると考えています。金沢、仙台、大阪での開催にあたっては、社団法人建設コンサルタンツ協会地方支部等の協力を得て、各地方でニーズが高い新技術を選定し、紹介しました。
当日は、民間企業を中心に国土交通省、地方公共団体、公益法人などから、全ての会場で合計630名の方々にご参加をいただきました。
各ショーケースでは、次のようなものを中心に22件の技術を紹介しました。
・光ファイバセンサによる斜面の多点変位計測技術・・・雷に影響されない光ファイバで斜面の変位を低コストで測定する技術
・NEW高耐力マイクロパイル工法・・・狭い場所でも構造物を支える杭を打てる技術
・過給式流動炉・・・下水処理場から出た汚泥を少ないエネルギーで燃やし、新たなエネルギーも生み出す技術
・インバイロワン工法・・・鋼製の橋等の古い塗膜を簡単にはがす技術
参加者の皆さんは、各発表を熱心に聴かれたり、並行して行われた展示・技術相談でも活発な意見交換をされたりしていました。
なお、2009年2月下旬に札幌でもショーケースを開催します。詳細は後日、土研ホームページにてお知らせしますので、是非ご参加下さい。
(問い合わせ先:技術推進本部)
「緑はどうなった?授業」報告
吉井グループ長の授業を受ける子供たち |
寒地土木研究所では、寒地水圏研究グループを中心に、有珠山周辺で防災教育プログラム「緑はどうなった?授業」プロジェクトに取り組んでいます。
このプロジェクトのもととなった「緑はどうなった?」は、度々噴火を繰り返す有珠山の、将来の噴火に備える取組の一環として作成された中学生向け火山防災副読本に掲載されたもので、有珠山噴火によって失われた緑が再生していく過程を室蘭開発建設部など関係者がまとめたものです。
有珠山の麓にあった洞爺湖温泉小学校では、2000年噴火による校舎の移転や住居の移転で辛い思いをした生徒が大勢います。そうした子供たちに心の安らぎを取り戻すため、この副読本の内容をもとにして、自らの手による緑の再生を含んだ防災というテーマで授業を行いたい、という地域の方々の熱意から、小学校、町、大学、寒地土研などの協力により、「緑はどうなった?授業」が始まりました。
この授業は、世代を超えて地域として防災を全うするための防災教育研究の実践であるとともに、寒地土木研究所(の前身)と北海道工業大学の共同研究から開発した「生態学的混播・混植法(混播法)」のフォローアップ・普及も目的としています。
混播法とは、その地域の自生のタネをもとにして植生を再生するもので、遺伝子レベルでもより自然に近い緑を再生しようとするもので、噴火により失われた緑を再生する場合にも有効な手法です。
こうした経緯で2004年に始まった「緑はどうなった?授業」ですが、最初はタネ採りから始まり、幼苗が育った2008年からは、タネ採取、播種、移植、植樹まで通して行うことで、参加する小学生たちの関心も大きく高まりました。子供達を対象としたアンケート結果からは、授業に親しみ、積極的に参加していく姿勢が示され、自然環境や防災に関する関心が高まっている様子がうかがえます。この授業により、子供たち自身やその家庭を通じて、植生の重要性やその背景としての地域の防災力を高めること、さらには、砂防事業など防災対策への理解を深める上で効果があるものと考えています。
「緑はどうなった?授業」はまだ4年の歴史しかありませんが、噴火によって失われた緑が再生し、拡大していくように、子供たちや地域の方々の防災意識が一層たかまり、防災事業の必要性に対しする認識が更に深まるよう、取組を進めていきます。
(問い合わせ先:寒地土木研究所 寒地河川チーム、企画室)
国連機関と共同で水に関わる災害のレポートづくりに着手
21世紀の地球は深刻な水問題に直面していると指摘されており、問題解決のための取り組みが国境を越えて進められています。
世界の水問題を扱う国際会議の一つに「世界水フォーラム」というものがあります。1997年から3年ごとに開催されているこの会議では、学者やNGO、国連関係者、各国の政府関係者などが一同に集まって議論が交わされています。国連が主催する正式な会議ではありませんが、ここで議論された内容は各国の政策立案者にも大きな影響を与えていると言われています。
また2000年には国連の23機関が水問題に関する新たな協力体制を作りました。この体制は世界水アセスメント計画(WWAP:World Water Assessment Programme)と名付けられ、本部はパリのUNESCO本部に設置されています。
”ますます深刻化する水問題の重要性、早く対処しないと問題解決できなくなるかもしれない”
WWAPではこの危機感を世界各国の政治家などに知らせるため、さらに日本など先進国で成功している解決技術や方法を途上国に紹介することを目的として、世界の水問題に関する取組事例を3年ごとに作成する報告書によって公表しています。「世界水発展報告書(WWDR:World Water Development Report)」 として出版しているこの報告書は、水資源や食糧問題、エネルギー開発、水に関わる災害などの分野を広く網羅しており、創刊号は2003年に日本で開催された第3回世界水フォーラムで公表されました。現在は2009年3月に予定されている第5回世界水フォーラム(トルコ)での発表に向けて第3号(WWDR3)の準備が進められているところですが、今回はWWDR3と併せて前述の各分野毎に詳細な別冊レポートを作ることが決まりました。
ICHARMと国際防災戦略(UN/ISDR)は洪水や津波など水に関わる災害に焦点を当てた「水関連災害の軽減(Water-related disaster risk reduction)」として共同で別冊レポートをまとめることとなり、作業に先立ち土木研究所とUN/ISDRの間で調印が行われました。この別冊レポートについてはWWAP傘下の関係機関からも協力を得る予定で、2009年8月末の公表を目指しています。
WWDRはUNESCOのホームページから入手できます(英語のみ)。
http://www.unesco.org/water/wwap/wwdr/
(問い合わせ先:ICHARM 防災チーム)
舗装に関するシンポジウム開催される
アスファルト舗装とコンクリート舗装の 施工シェアの推移 シンポジウムの開催状況 |
2008年11月20日に「TPTシンポジウム 2008」を開催しました。TPT(つくば舗装技術交流会)は、舗装に関する試験・研究の合理的かつ効果的な立案・遂行と舗装に関する新技術・新工法の発展に資することを目的とした土木研究所及び舗装会社の研究組織間の交流会です。
我が国の舗装の大半はアスファルト舗装とコンクリート舗装ですが、この30年来、そのほとんどをアスファルト舗装が占めています。アスファルトは原油を原材料として製造されており、その価格は原油価格の影響を大きく受けます。一方、コンクリート舗装は施工量の減少に伴う技術力の低下が危惧されています。そこで、本シンポジウムは、「原油高騰時代の舗装を考える−社会のニーズに応える舗装材料と工法開発−」をテーマとして、東京農業大学の小梁川教授による基調講演に続いて、アスファルト舗装グループとコンクリート舗装グループに分かれてパネルディスカッションをして頂きました(於:国土技術政策総合研究所会議室)。
<基調講演の概要>
・コンクリート舗装の基本特性(固い等)
・コンクリート舗装の長所(高耐久性等)と短所(養生期間が長い等)
・多様に展開されている各種のコンクリート舗装(硬練りコンクリート舗装等) 等
<パネルディスカッションにおける論点>
・耐久性と維持管理コスト
・平たん性等の路面性状
・リサイクル、環境負荷 等
シンポジウム終盤には来場者も巻き込んで活発な議論が行われ、アスファルト舗装とコンクリート舗装のそれぞれの特徴を活かして適材適所で舗装の設計・施工を考えることの重要性が再認識されるなど盛況のうちに終了しました。一般の方を含め約80名の来場者が詰めかけ、特に若手の舗装技術者にとって意義あるシンポジウムとなりました。
土木研究所舗装チームでは、引き続き舗装に関する研究はもとよりこれらの活動をも通じて、安全かつ効率的な社会資本整備に貢献できるよう精力的に活動を展開していきます。
(問い合わせ先:舗装チーム)
土木研究所が独立行政法人Webサイト評価で9位を獲得
日経BPコンサルティングが主催の「独立行政法人Webサイトユーザビリティ調査2008/2009」結果報告セミナーが、11月17日に東京で開催されました。この調査は、独立行政法人のウェブサイトを48の調査項目に基づき、「使いやすさ」についてスコア化したものです。土木研究所は、100点満点中75点で101法人中9位を獲得しました。昨年度に、使いやすさの向上を図るためウェブサイトのリニューアルを行ったことから、土木研究所の評価は、前回調査時の50点63位から大幅に向上したものとなりました。最もスコアが高かったのは87点の日本貿易振興機構でした。なお、30以上ある研究系独立行政法人の中では、3位でした。
この調査は、2006年に引き続き今回で2回目であり、2008年7月時点で存在した101の独立行政法人のウェブサイトを対象とし、同7月下旬から9月上旬にかけて実施されました。48ある調査項目の基準を満たしていると1点と評価されます。そして、調査項目は5つの調査軸に分類され、(1)トップページ・ユーザビリティ(利用者に入口を示しているか)、(2)サイト・ユーザビリティ(サイト全体が使いやすく設計されているか)、(3)アクセシビリティ(誰にでも使いやすいサイトであるか)、(4)インタラクティブ(Webの双方向性を生かし、接点を提供できているか)、(5)プライバシーとセキュリティ(安心して利用できるサイトであるか)にそれぞれ重みを付けて合計すると100点満点となるように計算されます。
前回調査時と比較すると、全体的な傾向としては、60点台以上のサイトが増えましたが、30点台も増加して上位と下位の差が広がったようでした。また、調査軸のうちプライバシーとセキュリティは、プライバシーポリシー新設など大幅に向上しましたが、インタラクティブはポイントが増加したものの依然として水準は低いままでした。評価が上位5位までのうち産業技術総合研究所以外は、前回調査をした2006年以降にサイトリニューアルを実施したり、サイト構造を見直したりしたことでスコアを伸ばしました。例えばサイト内でのナビゲーションを統一して使いやすくするなどの改善が実施されたそうです。
1位を獲得した日本貿易振興機構の担当者によると、海外勤務中に自社のウェブサイトの使いづらさを実感し、内部規定によってウェブサイトを管理する権限を広報課に集中させて、統一的な基準に基づくリニューアルを行ったそうです。
現在、土木研究所では、海外向けの情報発信も強化するため、英語版ウェブサイトのリニューアルに取り組んでいます。
(問い合わせ先:総務課)
2008年日韓国際共同シンポジウムを開催しました
現地検討会の様子(幌加内トンネル内) |
平成20年11月13日(木)〜15日(土)に寒地土木研究所と独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構農村工学研究所(以下、NIRE) および韓国釜慶大学地質環境研究所(以下、IEGS)の共催により、「2008年韓国釜慶大学地質環境研究所、日本の農村工学研究所および寒地土木研究所による国際共同シンポジウム」を開催しました。
近年、人間活動の拡大に伴い、廃棄物処理や地下空洞の活用など、より高度な地下空間の利用が脚光を浴びています。また、防災・環境への意識の高まりから、斜面災害への高度な対応、地盤・地下水汚染の解明や対策など、より精度が高くかつ経済的な地盤評価法の確立が求められています。このシンポジウムではこのような情勢を背景に、3つの研究所における最近の研究成果の発表・意見交換等が行われました。
11月13日に開催されたシンポジウムでは主催者挨拶の後、口頭発表が行われ、セッション(A)斜面崩壊のテーマについて6編の研究発表が行われました。
午後からの基調講演では、IEGSのCHUNG Sang Yong教授から、「地下水汚染源識別のための水理地質的・地球統計的研究」と題し、韓国、馬山市周辺における地下水水質の様々な分析事例についてご講演いただきました。
続いて北海道大学大学院五十嵐敏文教授から「熱水変質岩からの重金属溶出とその合理的な対策」と題し、自然由来重金属の評価と対策についての最新の研究成果について御講演いただきました。
口頭発表セッション(B)地盤環境の調査および評価手法のテーマについて5編の研究発表が行われ、全てのセッションで、熱心な質疑応答・意見交換が行われました。
翌11月14〜15日は地質学的仮題を更に掘り下げるため北海道空知管内幌加内トンネルおよび層雲峡で現地検討会を開催しました。
各国における地域特有の地質的課題、あるいは共通する課題に対して研究の前線に触れることは大いに勉強となります。今後も海外の研究機関や他の機関との共同シンポジウムを共催し、交流を図りたいと思います。
(問い合わせ:寒地土木研究所 防災地質チーム)
雪崩災害防止セミナーが青森市で開催される
井良沢先生による講演 |
雪氷チーム松澤上席研究員の発表 |
平成20年11月25日、青森市文化会館で「雪崩災害防止セミナー」を開催しました。このセミナーは、つくば中央研究所の雪崩・地すべり研究センターと、寒地土木研究所の雪氷チーム・道南支所が共同で企画・主催したもので、昨年度の秋田での開催に続き2回目になります。開催にあたっては、青森県の共催、国土交通省青森河川国道事務所の後援をいただきました。
セミナーでは、岩手大学農学部の井良沢道也准教授から、「最近の雪崩及び土砂災害から学ぶこと」と題して、雪崩災害や、雪に関連して発生する土砂災害などについて講演が行われました。また、土木研究所からは、以下の3題の話題提供を行いました。
・「雪崩災害の実態と雪崩の基礎知識」
昨冬期の雪崩発生状況や、過去の大規模雪崩災害の実態の調査結果のほか、土木研究所が行っている雪崩観測について紹介しました。また、雪崩の発生メカニズムや雪崩予測に役立つ気象情報の収集・活用方法などについて解説しました。
・「豪雪時における雪崩災害防止のための方策と最近の研究成果」
現在作成している「雪崩危険箇所点検・管理要領(案)」および「雪崩応急対策事例集」について、内容紹介を行いました。
・「道路雪崩対策と最近の研究成果」
道路周辺の雪崩危険箇所の把握および対策を行うための方法について解説しました。また、近年北海道において問題となっている雪崩対策施設を積雪がすり抜ける現象について、発生条件や対策方法に関する最近の研究成果を発表しました。
当日は砂防、道路等の行政担当者のほかコンサルタント会社など約130名の参加があり、熱心にメモを取りながら聞かれていました。雪崩・地すべり研究センターと雪氷チームでは、来年度以降もセミナーを開催し、雪崩災害防止に向けた取り組みを続けていく予定です。
(問い合わせ先:雪崩・地すべり研究センター)