土研ニュース

自然共生研究センター10周年記念報告会を開催


会場の様子
多くの方々に参加して頂きました

発表の様子
分りやすい内容で成果を報告しました

質疑応答の様子

 自然共生研究センターは、河川湖沼の自然環境保全・復元のための基礎的・応用的研究を行い、その結果を広く普及することを目的として設立されました。
 岐阜県各務原市にある自然共生研究センターは、平成10年11月の開所から10年の節目を迎えました。これを記念して12月18日、19日に名古屋と東京で「自然共生研究センター10周年記念報告会」を開催しました。本報告会は2年に一度開催され、センターの最新の研究成果を専門家や一般の方々にも広く普及することを目的としています。参加者は名古屋会場が186名、東京会場が160名で、河川行政関係者、研究者、環境ボランティアなど様々な人々に参加して頂きました。
 報告会では、坂本理事長に続き、名古屋では国土交通省中部地方整備局の佐藤直良局長、東京では国土交通省河川局河川環境課の中嶋章雅課長にご挨拶を頂きました。そして、自然共生研究センターの萱場祐一総括主任研究員(センター長)によるイントロダクションと四部門の報告を行い、東京会場では高橋裕東京大学名誉教授より講評を頂きました。
 報告会の第一部は「河岸・水際域の生態的機能と修復方法」に関する発表です。ここでは石礫のつくる間隙が魚類の生息場所としてどのように機能しているのか、実験河川で行なった実験結果や岩手県砂鉄川での事例をもとに報告を行いました。
 第二部は「河川環境の情報発信と環境教育」に関する報告です。ここでは実験河川で実施しているiPodを活用した取り組みや、環境学習を目的とした映像展示について、動画を交えて発表を行ないました。
 第三部は「流量・土砂の人為的改変の影響とその修復」に関連する報告です。ここでは砂や砂利などの河床材料を利用する底生動物の生息状況を調べることで、土砂還元が河床環境の改善にどのような影響を及ぼしているのかを確かめました。また、実験河川でアユやオイカワ等魚類の摂食量を調べ、河床付着膜の支配要因は洪水による物理的な攪乱要因だけでなく、魚類等の捕食者の存在が重要であることを説明しました。
 そして、第四部は「イシガイ類に着目した氾濫原の劣化機構と修復」についてです。陸域と水域の中間的な特徴をもつ氾濫原の環境を調べるため淡水域に棲む二枚貝を指標種に用いて、水路やワンドに見られる氾濫原環境の劣化要因を明らかにしました。
 今回はセンター設立10周年を記念する報告会でした。来場者からは多くの意見を頂く事ができ、今後の研究の方向性を再考する良い機会になりました。今後も現場との連携をさらに強化させ、積極的な研究成果の発信に努めていきたいと考えています。



問い合わせ先:自然共生研究センター

第22回寒地土木研究所講演会を開催しました


恒松所長の挨拶

安田喜憲教授の講演

寒地土木研究所パネル展の様子

 平成20年12月5日(金)、道新ホール(札幌市)で独立行政法人土木研究所第22回寒地土木研究所講演会を開催しました。当日は平日にも関わらず400名を超える方々のご来場をいただきました。
 本講演会は、当研究所の研究成果や寒地土木技術に関連するトピックス等を多くの方々に紹介するため昭和61年から行っております。
 特別講演では、環境考古学を提唱し、その第一人者である国際日本文化研究センター安田喜憲教授をお招きして、「環境考古学からみた北海道の将来」と題しご講演いただきました。年縞(湖底の堆積物の年々の層)から、過去の1年単位の広域にわたる周辺自然環境の変遷の把握を可能にした安田教授は「過去から日本は稲作漁撈文明という循環型文明社会を構築してきた。しかし近代に始まった消費型社会を続けていけば2070年には文明が崩壊するのではないか」と警鐘を鳴らしました。地球温暖化など全地球規模の環境の変化により、環境問題に対する関心が高まっていることもあり、来場者も高い関心を示していました。
 特別講演に続いて西村泰弘審議役が、北海道開発局からの業務移管に伴う寒地土木研究所の新たな研究体制を含めて、当所の研究体制と活動について紹介しました。
 一般講演では、水産土木チーム山本潤上席研究員が「生物に優しいみなとを目指して 〜磯焼け対策・藻場造成を中心に〜」、防災地質チーム伊東佳彦上席研究員が「地質と土木のはなし 〜土木工事における地質屋の役割(あるいは愚痴)〜」、つくば中央研究所リサイクルチーム岡本誠一郎上席研究員が「公共事業由来バイオマスのエネルギー利用 〜来るべき国内排出量取引制度への対応〜」と題し、それぞれ講演を行いました。
 また、同ホール内で行われた「寒地土木研究所パネル展」では各研究チームの研究成果をパネル、模型、パンフレットなどで展示し、来場者から好評を博しました。



問い合わせ先:寒地土木研究所 企画室

   

平成20年度土木研究所講演会を開催しました


坂本理事長の挨拶

李責任研究員による特別講演1

伊藤NPO法人会長による特別講演2


講演内容

 昨年の12月9日(火)、東京虎ノ門の日本消防会館(ニッショーホール)において、平成20年度土木研究所講演会を開催しました。
 本講演会は、土木研究所で実施している調査研究の成果や最近の土木技術に関する話題・動向について、広く一般の方々にご紹介するために、開催しているものです。また、今回は特別講演として、韓国建設技術研究院責任研究員の李参熙(イー・サンミ)氏及び防災情報機構NPO法人会長の伊藤和明氏の2名お招きしました。
 講演会当日は、民間企業を中心に公益法人、地方公共団体等より約400名の方々にご参加をいただきました。
 平成20年度の講演内容は右図のとおりです。
 外部有識者による特別講演では、昨年6月に韓国国民褒章を大統領より受章された韓国建設技術研究院責任研究員の李参熙(イー・サンミ)先生から、1995年から5年間土木研究所で学んだ理念、計画、設計、維持管理手法を生かした韓国の河川再生について事例を交えながら講演をしていただきました。さらに、政府・中央防災会議の「災害教訓の継承に関する専門調査会」の座長としても活躍中の防災情報機構NPO法人会長の伊藤和明先生から、日本列島でたびたび発生している地震のメカニズムや被害状況、地震に対する問題意識等について、論じていただきました。
 また、土木研究所職員による一般講演では、自然環境を保全するダム技術の開発をはじめとする土木研究所の研究の取り組み状況や成果の普及、昨年6月に発生した岩手・宮城内陸地震の被害状況などを講演しました。
 参加された方々からは、講演会終了後にアンケートを通じ、「土木研究所の社会貢献がよく分かった」「動画などで臨場感があり、大変リアルでおもしろかった」「研究報告により、今後の土木業界の動きがみえてくるところがあるので、次回も参加していきたいと考えている」といった声が寄せられました。聞いてみたい講演テーマとしては「安全、安心、環境問題」「地球温暖化に伴う、今後の気象予測とその対応」「土木構造物の耐震技術」等が、また土木研究所に対する要望では、「現場にすぐ使える研究をこれからも積極的に展開してもらいたい」「土木技術の社会的効果の広報を強化してもらいたい」等の意見が寄せられました。
 来年度以降も土木研究所の優れた研究成果等を報告する場として、よりよい講演会づくりに一層努めて参りたいと思います。
 最後になりましたが、貴重なご講演をしていただきました皆様、お忙しい中ご参加いただきました皆様、そして本講演会の開催にあたりご協力いただいた皆様に厚く御礼申し上げます。



問い合わせ先:研究企画課

   

人工衛星による雨量情報を活用した洪水予測システムの開発と普及について


IFASのコンセプト

IFASの画面(グアテマラの流域)

トレーニングの実施状況

 発展途上国では、近年、都市部での急激な人口の増加や資産の集中により、洪水による被害が増加する傾向にあります。このような状況に対し、これらの国々の多くでは堤防やダムによる河川整備が必ずしも十分に進んでおらず、洪水予警報システムやハザードマップ等を整備し、適切に洪水を予測し避難することにより人的被害を低減することが求められています。しかしながら、日本のような雨量観測網がなく洪水予測を行うために不可欠なリアルタイム降雨情報を得ることができない場合が多くあります。また流出計算を行うために必要となる流域内の特性などの情報も不足しています。
 そこで私たち水文チームは、洪水対策において国際協力を推進するために設立された国際洪水ネットワーク(International Flood network,IFNet)や民間会社等と協力しながら、人工衛星によって観測された雨量情報を利用した洪水予測システム(Integrated Flood Analysis System,IFAS)を開発しました。人工衛星による雨量は、今後さらなる精度の向上が求められるものの、ほぼ全世界をカバーし、インターネットを通じて無料で配信されています。この雨量情報を活用することにより、地上による雨量観測情報が乏しい地域においても、洪水予測を行うことが可能となります。またこのシステムでは、インターネットで公開されているグローバルなGISデータを使いて洪水予測に必要な流出計算モデルを作成しパラメータを推定するための機能や、洪水の可能性をわかりやすく伝えるための画面表示機能等も備えています。
 また私たちは、このシステムを使って発展途上国が自分たちで洪水予警報システムを構築し洪水被害低減に役立つように、人工衛星による雨量観測の仕組みや利用方法、私たちのIFASの利用方法等に関する研修についても実施しています。昨年の10月には、世界気象機関(WMO)の協力を得ながら国際洪水ネットワークとともに、アジア、南アメリカ、アフリカの7カ国から洪水対策の担当者を招いて研修を行いました。また国際的な学会・シンポジウム等に参加し、このシステムのPRを行っています。
 このような取り組みを含めて、私たちの洪水予測システムを利用することにより、発展途上国などの水文情報が乏しい地域においても効率的・効果的に洪水予警報システムの構築が可能となり、洪水被害低減に役立つものと考えています。



問い合わせ先:ICHARM 水文チーム

   

第1回技術者交流フォーラムin室蘭を開催しました


会場の様子

講演プログラム


室蘭工業大学田村教授による講演

 平成21年1月27日(火)、ホテルセピアス花壇(北海道室蘭市)で第1回技術者交流フォーラムin室蘭を開催し、産学官から240名のご参加をいただきました。
 寒地土木研究所は現場密着型の技術開発、技術普及および地域における技術の向上等のため、道央、道南、道北、道東に支所を設置しています。各支所では研究開発の現地調査・試験の拡充とともに、地域におけるニーズの把握や研究成果・技術の普及、技術指導を実施しています。
 「技術者交流フォーラム」はこれらの活動の一環として、地域において求められる技術開発に関する情報交換、産学官の技術者交流および連携等を図る目的で、開催したものです。第1回目の今回は「環境イニシアティブを先導する技術」をテーマとし、環境に関する様々な技術を現場の方々に紹介しました。
 基調講演には室蘭工業大学田村亨教授をお招きし、「室蘭地域への水素社会の導入について」と題し、御講演をいただきました。田村教授は「地球温暖化対策にはCO2排出量を抑えることが重要である。そのためには水素エネルギーの活用が有効となる。室蘭市には製鉄所があり、製鉄所のコークス炉を利用することで非常に安価な副生水素が燃料電池自動車にして13,000台分も生み出される。インフラ整備等の課題は多いが、市民や産学官が協力して室蘭地区を水素タウンとすることは可能だ」と話されました。
 一般講演では6名から、様々な切り口で環境問題について講演を受けました(右図参照)。
 参加者は熱心に各講演に耳を傾け、講演に引き続き行われた交流会でも活発な意見交換を行いしました。
 なお第2回技術者交流フォーラムは2月19日に釧路市で開催します。詳しくは寒地土木研究所HPをご覧下さい。



問い合わせ:寒地土木研究所 寒地技術推進室道央支所

   

科学技術週間:平成21年4月14日に一般公開を行います


昨年の例:試験走路(高速走行体験)

振動実験施設(三次元大型振動台)


昨年の例:ICHARMの活動紹介

 科学技術週間にあわせて、今年も国土技術政策総合研究所と合同の一般公開を4月14日(火)に行います。公開内容は、次のとおりです。

(1)施設見学(施設見学受付9:45〜14:45)
 下記施設に8回に分けてバスでご案内します。所要時間は約1時間20分です。見学開始時間は、10:00、10:30、11:00、13:00、13:30、14:00、14:30、15:00(最終)です。
 試験走路で高速走行を体験していただき、その後、振動実験施設(三次元大型振動台)、構造力学実験施設(輪荷重走行試験機)、海洋沿岸実験施設(水理模型実験)で実験施設の見学、実験の様子をビデオとパネル等で説明します。

(2)国総研研究本館1階ロビー(見学時間10:00〜16:20)
 ビデオ及びパネルによる研究紹介(パネル展示等)

(3)ICHARM棟
 1階ロビー:ICHARMの活動紹介(パネル展示)
(見学時間10:00〜16:20)
 講堂:ICHARM外国人研究者等によるプレゼンテーション(英語)
(講演時間15:00〜16:00)

※学校など団体での見学は、事前に登録をお願いします。
※つくばセンター(TXつくば駅)から当研究所までの移動は、路線バスをご利用下さい。
つくばセンター3番のりば(建築研究所行又は下妻駅行)で乗車、土木研究所前下車。(片道340円、所要時間約15分)



問い合わせ先:総務課