新潟試験所ニュース |
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現道における凍結防止剤CMA40の散布効果に関する一考察1. はじめに 近年、スパイクタイヤの使用規制を契機に、道路利用者のニーズとして冬期路面管理水準の高度化が求められ、道路管理者としては雪氷路面対策が重要な課題となっています。一方、凍結防止剤の散布量も年々増加傾向にあり、凍結防止剤の過剰散布が道路沿道環境に及ぼす影響が懸念されています。
2.試験概要 本試験は合計3回述べ56時間行いました。凍結防止剤の散布方法は図-1に示すように一般国道18号板橋新田の信号T字路交差点を境界として長野側にCMA40、上越側にNaClを散布しました。凍結防止剤の散布効果は100%制動時のすべり摩擦係数で評価し、すべり摩擦係数は当試験所所有のすべり抵抗測定車を用いて走行車線外側車輪通過位置で測定しました。 3.試験結果と考察
図-2は第1回現地実証試験を行った1月20日20時から同22日8時までの時間降雪量、路面温度および路面雪氷厚の経時変化です。試験時の時間降雪量は、試験開始直後に7〜8cmの降雪がありましたが次第に小康状態になり1月21日の日中には一時降雪がなく、その後は1〜2cmの降雪が断続的に降り続きました。路面温度はCMA40散布区間が−1.8℃〜0.5℃,NaCl散布区間が−2.9℃〜−0.3℃で推移しました。なお同一気象・交通条件下の路面温度にCMA40散布区間とNaCl散布区間で温度差が見られるのは、NaClが吸熱反応を引き起こし路面温度が低下しているのに対して、CMA40は発熱反応をもつCMAとの混合物であるため温度低下を起こしにくいためと考えられます。あるいはNaCl散布区間の試験地点が中郷大橋(鋼橋)の近傍にあるため橋梁部の熱的影響が舗装内を伝導した可能性も考えられます。路面雪氷厚については降雪0cmまたは断続的な降雪が続いた1月21日11時から同22日6時までは凍結防止剤散布種類の違いによる路面雪氷厚に差が見られないのに対して、試験開始直後の除雪車が頻繁に出動していた1月20日22時から同21日10時まではCMA40散布区間の方がNaCl散布区間と比較して道路雪氷が多く残雪していることが読み取れます。 |
アンケート調査項目 | アンケート調査結果 |
1.路面に当てるグレーダの刃の雪地圧はCAM40とNaCl を区別して行いましたか? | 自動のまま:9人 区別した:1人 区別しない:2人 |
2.除雪作業実施時の作業者にかかる抵抗はどちらが大きいですか? | CMA40が大きい:4人 NaCl が大きい:2人 同じ:6人 |
3.除雪後の道路状況についてCMA40とNaCl では雪の残り方に違いはありますか? | ある:8人 ない:3人 |
4.3で「ある」と回答された方にお聞きします。どちらが多く残りますか? |
CMA40 :7人 |
(調査対象者:除雪グレーダおよび除雪トラックを運転するオペレータ12人) |
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写真−1 二次元比抵抗探査による地下水調査結果 |
図-3は第1回現地実証試験を行った1月20日20時から同22日8時までの走行部におけるすべり摩擦係数(100%制動時)および凍結防止剤路面残留量の経時変化です。凍結防止剤は第1回現地実証試験試験中にNaCl区間で9回、CMA40区間で4回散布されました。なおCMA40散布車両が試験地点を通過した時間は目視、NaCl散布車両が試験地点を通過した時間は目視と除雪作業日報によるものです。凍結防止剤の路面残留量は光屈折式塩分濃度計による測定結果であり局所性を捉えやすいため一目安に過ぎません。このため凍結防止剤の路面への残留性については定量的な把握および評価をするまでには至りませんでした。すべり摩擦係数はCMA40散布区間が0.19〜0.47、NaCl散布区間が0.21〜0.47で推移し、時間帯によっては0.1〜0.15 程度の差が見られました。しかし全体的にはCMA40散布区間はNaCl散布区間と比較して凍結防止剤の路面残留量が少ないにも関わらずCMA40散布区間とNaCl散布区間で同程度のすべり摩擦係数が確保されていることがわかりました。これより100%制動時のすべり摩擦係数を確保することを目的とした凍結防止剤散布車両の出動回数はCMA40を散布することによって半数以下に削減できる可能性があることがわかりました。 |
(文責:荒川) |
積雪寒冷地域における冬期道路では、凍結・圧雪路面が形成されやすく、タイヤと路面の間の摩擦抵抗が低下し、スリップによる交通障害や登坂不能車両による交通渋滞が発生しています。 |
圧雪作成及びすべり測定装置の諸元
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写真−1 圧雪作成及びすべり試験装置全景 | 写真−2 圧雪作成状況 |
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