● 背景
河川では、洪水や水面下の生息場などフィールドで捉えにくい自然現象が多くあります。これらの情報を効果的に伝える手段として、映像を用いた動画コンテンツの役割が期待されています。映像は長期的な環境の変化の時間を縮めたり、肉眼では見えにくい水中の微小な物質を拡大する等、捉えにくい現象を動的に視覚化することができます。
● 方法
実験河川において、時間的・空間的な要因から捉えにくい現象を抽出して、動画コンテンツを作成しました。例えば、@「ワンドと川が繋がるとき」は洪水によって増水した本川がワンドと繋がっていく様子を定点カメラで撮影し、時間を圧縮して編集しました。また、A「川底の石をひっくり返す」は陸上から確認することが難しい底生動物を対象に、生息場所を拡大しました。その他にも、これまで実験河川で行なった調査や実験の状況、研究の概要等のコンテンツを30項目作成しました(図1)。
「実験河川ガイドウォーク」は、iPod※(Apple社)に動画コンテンツを取り込みフィールドで提供することで、捉えにくい自然環境を効果的に伝達することを目的に開発したセルフガイドプログラムです(写真1)。利用者は実験河川を巡りながら、フィールドに設置してある複数の簡易サインパネルの前で動画コンテンツを視聴することで、様々な河川環境情報を得ることができます。なお、動画コンテンツはiTunes※のPodcastsで配信しているので、個人が所有するiPod※に直接取り込むこができます。
● 結果と考察
自然共生研究センターでは、iPod※を40台用意して見学者に対してアンケート調査を実施しました。その結果「洪水による川の変化が良く分かった」、「見えにくい水中の状況が分かった」等の意見を聴くことができました。
河川が本来有している良好な自然環境の保全・復元には、専門的な知識や情報を河川に関わる様々な人々と共有する必要があります。しかし、学際的領域である河川環境の分野においては、さらに他の様々な現象についても適切な情報発信手法の開発が求められています。今後は特徴的な河川空間を再現することができる実験河川において現象を収集し、河川環境への理解を妨げている要因分析を行ない、実際の河川に適応できる情報発信手法を検討していきたいと考えています。
(※iPodとiTunesはApple Inc.の商標です。
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担当:真田 誠至 |
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■図-1 動画コンテンツの一例 |
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■写真-1 実験河川ガイドウォークの様子 |
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