● 背景と目的
湖沼や池では、夏になると水が緑色に濁る場所を見かけます。水の濁りがひどくなると、水草が無くなり、水草に依存する小魚などの生息場も減少し、親水性のみならず水界の生態系バランスが崩れてしまいます。ここでは、水草とこれに代わる人工水草がもつ水質の安定化機能について簡単な実験結果を紹介しましょう。
● 方法
実験池(水深は0.9m)に直径25cm高さ1mの透明なアクリル製の筒を用意し、ケース1は何も入れず(対照区)、ケース2・ケース3には鉢植えの水草(クロモ区)、人工水草(人工藻区)を入れました(図1)。各筒の中間地点に、DO・水温・クロロフィルの計器を設置し自動計測を行いました。また、実験中は約2日に1回のペースで採水し、筒内の水質変化を測定しました。実験期間は9月8日から19日とし、13日の採水後に筒内の水量に対して全窒素含有量が2ppm増加するように液体肥料(ハイポネックス液)を加え、栄養塩濃度の上昇に伴う筒内の水質変化をみました。さらに、実験前後に池と各筒で採水を行い、動物プランクトンの簡易指標として94μmの網で濾過したPOC(懸濁態有機炭素)および植物プランクトン数を分析しました。
● 結果と考察
液体肥料添加後、筒内のリン酸態リンの濃度は、ケース2の水草有りのケースで低く、ケース1・3ではほぼ同等となりました(図2)。よく知られているように、水草は、成長に栄養を利用するので水中の栄養塩が低下するわけです。次に、DO(%)の変動を比較すると、ケース1で飽和度が高いですが、ケース2・3ではほぼ同様でした(図3)。表1を見るとケース1だけ植物プランクトンが1桁多いので、DO変動の違いは、植物プランクトンの光合成量の違いと考えられます。また、同表のPOCを見ると、ケース2・3ではPOCが大きく、植物プランクトンが少ないことがわかります。これは、水草・人工水草の表面に付着生物が現れ、物質収支が変化したことで、植物プランクトンの増加が抑えられ、動物プランクトンが増加したものと考えられます。最後に、写真1に実験終了時の各筒の様子を示します。植物プランクトン量の多いケース1では透明度が低く、逆にケース2・3では透明度が著しく高いことが分かります。この例のように、水草や人工水草は、水の透明度を高めるとともに、水界における生態系の安定化にも寄与している可能性があります。
担当:大石 哲也、小野田 幸生 |
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■図1 実験模式図 |
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■図2 リン酸態リンの変化 |
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■図3 DO(%)の変化(平均) |
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■表1 各箇所でのプランクトン量の違い |
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■写真1 実験終了時の各筒の透明度 |
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