● 背景と目的
護岸ブロックの形状、サイズ、積み方、目地などの組合せによって表現される意匠を景観パターンと呼びます。既往の研究から護岸の表面に穴あきが目立つ景観パターンは周囲の景観と調和しにくいことが明らかになっています。
このような景観パターンは、主に植物の繁茂を目的としているブロック(以下、緑化ブロック)で多く見られます(写真1)。緑化ブロックには、植物を繁茂させるために開口部や緑化スペースを設けます。しかし、植物が十分に繁茂していない状態では、穴が目立ちやすくなり、周囲の景観と調和しにくくなるようです。
そこで、植物が護岸ブロックをどの程度被えば、景観 パターンが隠れ、周囲の景観と調和するかを明らかにするため、検討を行いました。
● 方法
まず、周辺の風景を同じにした上で印象を比較できるように、同一の風景写真に、3 要素(植被車、景観パターン、草丈)を変化させた緑化ブロックを当てはめたフォトモンタージュを作成しました(写真2)。次に、作成したフォトモンタージュに対して、周囲の景観と調和しているかどうか、景観パターンが目立つかどうかの設聞について、アンケート調査を行いました。
最後に、緑化ブロックが周囲の景観と調和するためには、どの程度の植被率が必要かについて分析を行いました。
● 結果と考察
アンケート調査を基に分析を行った結果、植被率が70%以上の場合で、護岸周囲の景観と調和しやすい傾向がありました。これは、植被率が高くなることで、穴あき等の景観パターンが目立ちにくくなったためだと考えられます(図1)。また、植物が繁茂することで、護岸から背後地への自然景観の連続性が確保でき、周辺の明度と差がなくなったからだとも考えられます。
景観パターンの違いによって評価が変わりました。護岸正面から見た時に穴の目立たない階段タイプでは評価が高く、植被率が60%の場合でも、周囲の景観と調和すると判断されました(図2)。
今後、緑化ブロックを使用する際は、緑化ブロックのタイプを認識し、周囲の景観と調和する植被率の確保を念頭に置く 必要があります。
担当:藤森 琢 |
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■写真1 検討対象とした景観パターン |
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■写真2 フォトモンタージュ例 |
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■図1 植被率に対する調和の評価値 |
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■図2 植被率と調和の評価値の関係 |
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